1.4.2 震度(その2)

intensity Knowledge

かつて、知能検査を開発したビネーが「知能とは何か」という問に「知能検査で測定されたもの」と答えたと伝えられています。震度も現時点では「震度計で測定されたもの」と言うことができます。

このような定義を操作的定義と言われており、知能は様々な方法で測定することが出来ます。一方で震度は現時点では震度計での測定が唯一の方法となっています。従って、震度とは地震が起きて、震度計がその震動(地震波)を感知して記録を行った結果が、日本では唯一の公式な方法となります。

震度は震度計で測定されるものであり、その値は、マグニチュードと同様に相対的な数値として捉えることができます。

震度計の測定値は、地震波が測定点に到達して初めて観測されるもので、震源と観測点との位置関係、またその間にある地殻や地層などの要因によって変化します。さらに、地震の規模や観測点の数によっても測定値は異なることがあります。


地球上で発生する地震のおよそ 90% 以上が、深さ100kmより浅い場所で起きるものとされています。従って、深さ 100km よりも浅い地震を「通常」地震とし、深い地震を「異常」地震と呼ぶことがあります。また、深さ0〜70kmを「浅発地震」、70〜300kmを「中深発地震」、300km以上を「深発地震」という呼び方もあります。

ここでは「浅発地震」、「中深発地震」、「深発地震」という呼び方を用いることにします。

震度について考えるには、先のとおり震源と観測点の位置関係と地震の規模が大きく関係しますので、その例としていくつかの地震の震源(震央)と観測点の関係を示すマップやグラフを見ていきたいと思います。

図1-4-2-1 小笠原諸島近海で起きた 3つの地震

震源が近傍の地震を見ていきます。小笠原諸島近海を震源とする 3 つの地震の震央点と、それぞれの地震の観測点のマップです。

マップの初期設定は、3つの地震の観測点全てが表示されています。右上のアイコンを開いて、チェックを操作することで地震ごとの観測点を見ることができます。図の題名にはリンクが貼ってあり、クリックすると新しいタブに大きなマップが表示されます。

定説? では、伊豆・小笠原弧では大きな地震は起きにくいとされているようですが、実際は深発地震であるものの、2015年5月30日の地震は、M8.1、深さ 682km という地震ですが、神奈川県二宮町の観測点で機械計測震度5.1、震度 5 弱というかなり大きな揺れを観測しています。マップでその範囲を見ると北海道から南西諸島まで震度を測定しています。

また、同じ年の 6月23日には M6.8、深さ 484km という地震が起きており、これもエネルギー換算すると 1.00e+15 となり、大地震と呼んで良い規模と考えられます。ちなみに、5月30日の地震は 8.91e+16 となっており、ふたつの地震のエネルギー差は相当のものであると言えます。

もうひとつ、2020年4月18日にも先のふたつの地震の近くで M6.8、深さ477km の地震が起きています。たまたましょうが、2015年6月23日の地震とマグニチュードは同じ、深さもほぼ同じという地震になっています。

震源は近くて、ふたつの震源の距離は 約62.84km、震央間距離(大円距離)は 約62.99km となっています。マップで比べて見ると同じ規模、深さの地震でも震源の位置が異なることで、最大震度こそほぼ同じですが、震度観測点の分布が異なっています。

前者は概ね、関東から南東北の範囲で震度が観測されていますが、後者は北東北から九州までと広範囲で震度が観測されています。

これらの事実を見るだけでも、地震の震度予測は出来ないと言っても間違いはないでしょう。

図1-4-2-2 2015年5月30日小笠原諸島近海地震の 3D グラフ

図1-4-2-3 2015年6月23日小笠原諸島近海地震の 3D グラフ

図1-4-2-4 2020年4月18日小笠原諸島近海地震の 3D グラフ

深発地震ではありますが、震源が近い規模の違う地震、規模が似ている地震での震度観測点の違いが良くわかったと思います。地震という自然現象はカオス的と言われています(そもそも自然現象は全てカオス的と言えます)が、全くそのとおりだろうと思います。

浅発地震での震度観測状況として、福井地震兵庫県南部地震の 3D グラフも表示してみます。

図1-4-2-5 福井地震 3D グラフ

図1-4-2-6 兵庫県南部地震 3D グラフ

震度7 の判定方法を変えることになった福井地震は、M7.1 という大地震、かつ深さが 0km という地表が震源???というものでした。そのために震央周辺は 震度7 というこれまでに無い揺れと被害を受けることになったと考えられます。ひょっとしたらもっと震度は大きかったかも知れません。

そして、地震としての一大インシデントとなった兵庫県南部地震は、M7.3、深さ 約16km というこれも浅発地震で、震源が大都市直下であるために甚大な被害を受けたことは、記録だけでなくいつまでも記憶に残るものであります。

それぞれの地震の 3D グラフを見ると、深さと場所、そして、地震の規模(マグニチュード)によって、震度だけで無くさまざまな観測結果になることが良くわかります。

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