地震の規模の大小を表す量。1935年アメリカの地震学者リヒターが,震央距離100kmに置いた標準地震計で記録した最大振幅(μm)を換算した値の常用対数をとったものとしてきめられた。Mが1の差はエネルギー量は約32倍で,2異なるとエネルギーは約1000倍の差となる。現在では計測器の種類や記録されたどの地震波を読みとるか,さらに地震によって起こるさまざまな現象等を考慮するなどによって,表面波マグニチュード(Ms),実体波マグニチュード(Mb),モーメント・マグニチュード(Mw)など,いくつものマグニチュードが提案されている。日本では気象庁マグニチュード(Mj)もある。最近では大規模地震について,主として地震を生じた断層運動のモーメントを推定して正確なエネルギー量を表現できるモーメント・マグニチュードが広く用いられている。
これまでに発生した世界の大地震はチリ地震(1995年)のMw9.5を筆頭に,アラスカ地震(1964年)Mw9.2,スマトラ島沖地震(2004年)Mw9.0,東北地方太平洋沖地震(2011年)Mw9.0などがある。出典: 地学用語集
マグニチュードは、引用にあるとおり米国の地震学者リヒターが、カリフォルニア州で起きる浅発地震を観測し、地震の規模の算出方法を考案して定義したものが始まりとなっています。
この考え方を検討してマグニチュードが地震が起きるとその観測値に基づいて、地震の規模として算出・公表されるようになりました。日本では気象庁マグニチュードが採用されており、気象庁が日本の地震発生の特質を考慮に入れて考案したもので、各観測点で地震が発生してそれが地震計に記録されると、その記録を元にマグニチュードを求めて速報として発表されています。
さまざまなマグニチュードの中で、モーメントマグニチュードは国際的に採用されているマグニチュードで、金森博雄博士が1977年に提唱したものです。
モーメントマグニチュードは、地震発生後に地震計の波形を元にして、地震の物理的メカニズムを解析してその規模を精査することで算出される地震の規模を示す数値です。モーメントマグニチュードの採用により、それまで M8 クラスまでとされていた地震の規模が、M9 クラスのものも起こりえると考えられるようになりました。
マグニチュードは相対的な数値で、その算出には様々な方法があります。ある意味、地震の規模は理論値、計算値であり実測値ではないということに注意が必要ではあります。また、観測点数や処理によっては数値が変動することは有り得ることで、実際に気象庁発表のマグニチュードも発表ごとに数値が変わることが見られます。
表 1-5-1 マグニチュードとエネルギー(ジュール: J)の対比表

マグニチュードは地震の規模を示す数値とされていますが、その数値の変化は対数値で示されるものです。マグニチュードが 1 増えると、その規模は 32 倍になるという、32 倍の法則が成り立ちます。
表 1-5-1 はマグニチュードとエネルギー(J) との対比表です。M1 は 2.000E+06 となっていて、最大の M9 は 1.995E+18 とその差はおよそ 1E+12 という膨大なもの、およそ 1兆倍、となります。最大と最小でなくても、M7 と M9 とでは 1E+2 の差があるので 1000倍の違い。M7 の地震が 1000 回起きて放出されるエネルギーが M9 の地震 1 回分と想定されます。
マグニチュードの数値を見るだけでは、実際の地震の規模を理解したことにはならないと、エネルギーということからジュール換算をするようにしたところ、つくづく思うようになりました。
図 1-5-1 福島県沖で起きた M6 の地震
図 1-5-1 は、福島県沖で発生した M6.0(6.310+E13)の地震で観測された震度分布マップです。マグニチュードは同じものの、緯度・経度、深さが異なることから、地震がどのように観測されるかを良く表していると思われます。
初期表示は全ての地震の観測点が表示されています。右上のアイコンをクリックすると各地震の観測点について 表示/非表示 が出来ますので、その違いを確かめられます。
参考までに 3 地震の 3D グラフも掲載します。
図 1-5-2 福島県沖(37.06N、142.4867E、深さ 0.28km M6 の地震)
図 1-5-3 福島県沖(37.17N、142.0267E、深さ 25.55km、M6 の地震)
図 1-5-4 福島県沖(37.4233N、142.2733E、深さ 29.91km、M6 の地震)
図 1-5-2 から 4 まで、陸域から遠い順番にグラフを並べました。全く同じエネルギーの地震でも、その位置の違いだけで観測点数、観測点範囲や震度が異なることが良くわかります。
図 1-5-5 福島県沖で起きた M4〜6 の地震
図 1-5-5 は、福島県沖で起きた M4〜6 の震度観測点マップです。ほぼ同じ位置(緯度経度が近傍)の 3つの地震、地震規模の違い、M4: 6.310E+10、M5: 1.995E+12、M6: 6.310E+13がどのように観測点数、範囲や震度に見られるか良くわかります。M4 と M6 の差は 1000倍となります。
M6 の地震と同様に、3地震の 3D グラフも掲載します。
図 1-5-6 福島県沖(37.3983N、141.285E、深さ 23.67km M4 の地震)
図 1-5-7 福島県沖(37.4117N、141.31E、深さ 18.34km M5 の地震)
図 1-5-8 福島県沖(37.4233N、142.2733E、深さ 29.91km、M6 の地震)
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震で、地震エネルギーが同じでもその影響は他の要因で異なること、また、比較的要因は同じでも地震エネルギーが異なるとその影響は大きく異なることを確かめることが出来ました。
震度は、あくまでも観測点での揺れ具合を示したものであって、それは地震の大きさや影響範囲を示すものではありません。そして、地震のエネルギーが大きかったとしても、震源の位置や深さなどの要因によって、その影響は異なることがわかります。
日本列島では、毎日、M0 から M4 程度の地震は、能登半島地震が起きて安定化したあとは 400〜700 回 の幅で起きています。M6前後の地震が起きると、1000 回を越えることもあります。
マグニチュードが大きな地震は、地殻の歪みが溜め込まれ核となり、その臨界値に達した時に一気にエネルギー放出したものと考えられます。地震の予知・予測は、この地殻の歪みの集中するエリアを確認すること、集中点を特定すること、さらに臨界値の測定が行えてはじめて可能となると考えます。
マグニチュードも震度も、いずれも計測値による算出であり、ある意味では起きなければその値を得ることが出来ないものと言えます。
日本列島では、6.3E+4 J(M0)から 6.3E+10(M4)の地震は毎日どこかで起きています。地震発生の仕組み、核の確認と臨界値の測定ができない現状からは、個人的には 1E+15 J(M6.8)以上の大地震がごく一部の地域を除いていつどこで起きてもおかしくないと考えていた方が良いと思っています。
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