北海道南部
図1-1 2025-01 北海道南部の震央マップ
北海道を南と北に分け、太平洋側を南部としました。太平洋側には千島海溝があり、それの沈み込みに従うように震央が分布しているように見られます。ほとんどが海域での地震で、2025-01 では釧路地方中南部から北部にかけての地震が陸部のものとなっています。
図1-2 北海道南部の震源 3D 散布図
図1-1 の震央マップを 3D 散布図にしたものが 図1-2 になります。z軸を深さに合わせたことで、実際の震源がどのような分布になっているかが良くわかります。
概ね 図1-1 で説明したように、海溝の深まりに沿うような形で震源が広がっているように見られます。
多くが浅発地震 70km未満、中深発地震 70〜300km未満の範囲で起きており、ほとんどが浅発地震と見られます。例外的にひとつだけ千島列島を震源地域とする深発地震があります。
図1-3 北海道南部震源地域別地震回数グラフ
図1-3 は、各震源域別での各日の地震回数をプロットして、プロット間を線で結び折れ線グラフにしたものです。
地震の回数は 7回/日 が最大となっていて、規模の大きな地震もなく比較的落ち着いた状況にあると考えられます。 ただし、釧路沖と浦河沖、次いで十勝沖の回数が多く、またくり返しているという点には注意が必要かもしれません。
図1-4 北海道南部エネルギー分布ボックスプロット
図1-5 北海道南部エネルギー分布散布図
図1-4 は震源地域別エネルギー分布のボックスプロット、図1-5 は同じく散布図となっていて、図4 で地震回数、最大値(回数)、最小値、中央値、四分位値がそれぞれわかります。図5 では震源地域別での地震がエネルギー別にどのように分布しているかがわかります。
ボックスプロットで地震が大まかな分布の形と統計的な結果を、散布図では実際にどのような分布になっているかを見ることができます。散布図にはボックスプロットでは表示出来なかったマグニチュードも見ることができて、マグニチュードの違いがどのくらい実際のエネルギー差があるかがわかります。
概ね地震が起きるエネルギー帯は、エネルギー値の小さい(マグニチュードが小さい)ものになっており、地震活動はそれほどに活発ではないと考えられます。千島列島、択捉島南東沖の数値が高くなっているのは、観測点と震源との関係があると推測され、小さな地震は震源から距離があり、観測されないと考えられます。
図1-6 北海道南部震源深さ分布ボックスプロット
図1-7 北海道南部震源深さ分布散布図
図1-6 は震源地域別深さのボックスプロット、図1-7 は同じく散布図となっています。地震の震源は多くが 0〜70km の浅発地震で、あとは 70〜300km の中深発地震となり、ほぼ 0〜300km の範囲で地震は起きています。
北海道南部は、北方領土周辺を除いて釧路地方中南部と苫小牧沖以外、7 震源地域は概ね 〜70kmの範囲の地震となっています。陸域の釧路地方中南部と海域の苫小牧沖に、中深発地震が多い原因が何かをいずれ確かめることにしたいと思います。
北海道北部
図2-1 2025-01 北海道北部の震央マップ
図2-1 は、北海道北部の震央マップです。データの抽出条件を誤って、北海道東方沖を北部にしてしまいました。来月以降は修正して北海道南部に加える予定とします。
地震の頻度が低く、日々のデータ収集と可視化ではわかりにくい、大きな地震が起きたことがある震源地域の震央状況がまとめてみると良くわかります。
日本海東岸に沿うようにプレート境界や海嶺があると考えられており、その影響を受けて大きな地震が起きているのが北海道では奥尻島の南北海域となっています。さらに、樺太へとプレート境界は延びており、日本の観測網では限界があるものの樺太周辺の自身もある程度以上の規模のものを観測することができています。
図2-2 北海道北部の震源 3D 散布図
図2-2 は震源の 3D マップで、北海道南西部・日本海北部と北海道東方沖で地震が多く発生していることがわかります。やはり多くは浅発地震ですが、中深発地震も太平洋プレートの沈み込みにあわせるように起きているように見られます。
図2-3 北海道北部震源地域別地震回数グラフ
図2-3 は各震源地域別の各日地震回数となっています。最大回数は 1日6回で北海道南西沖と北海道東方沖で見られました。他の地域を非表示にしてみると、北海道南西沖では 1月4日 以外は1回以上の地震が起きていることがわかります。
過去に大きな地震が起きた震源地域ということもあり、最大回数が 6回 と落ち着いているとは言え、ほぼ毎日地震が起きており、千島海溝と同様に常時注意が必要な地域であると考えられます。
図2-4 北海道北部エネルギー分布ボックスプロット
図2-5 北海道北部エネルギー分布散布図
図2-4、図2-5 は地震エネルギーのボックスプロットと散布図です。北海道東方沖を除けばほとんどが1E+10 以下の小規模な地震となっています。
図2-6 北海道南部震源深さ分布ボックスプロット
図2-7 北海道南部震源深さ分布散布図
図2-6、図2-7 は、震源の深さについてのボックスプロットと散布図です。地震の回数が少ない場合のボックスプロットは参考にすることが出来ませんが、散布図は数が少ないだけに分布が良くわかります。
散布図を見るとほとんどの地震が浅発地震ということが良くわかります。浅発、中深発、深発地震という区分は便宜的なものとされています。それでも、ほとんどの地震が浅発、中深発域で起きていることも確かです。
ただ、宗谷東方沖とオホーツク海南部では中深発と深発域の境界部、オホーツク海南部では深発域に 2 の地震が見られます。この深さの地震がどのようなものかは今後の確認事項といたします。
東北地方太平洋側
図3-1 2025-01 東北地方太平洋側の震央マップ
図3-1 は東北地方太平洋側の震央マップです。太平洋沿岸の海域では未だに地震活動が活発。沿岸近くと遠くに帯状に 2つのエリアが並行してみられます。大きな規模の地震が無いのが幸いです。
その一方で、1月23日に会津地方の下会津(会津盆地を上、南会津を中、栃木・群馬・新潟県境近くを下とする)で M5.2、深さ 4.0km という中規模の地震が起きました。最大震度が 5弱と地震規模に対して大きな震度となったのは、震源が浅かったことと観測点がすぐ近くにあったことによります(参照: 福島県会津の地震)。
この地域の地震は、統計的には上会津が最も地震回数が多くなっています。磐梯山(活火山)があることから、大きな地震が起こりにくいという特徴があり、上会津以外の中会津、下会津では M5〜6 クラスの地震が過去に起きています。
図3-2 東北地方太平洋側の震源 3D 散布図
図3-2 は、震源の分布を表した 3D グラフです。海域地震と陸域地震との震源分布の違いが良くわかります。マップで述べたように、海域では並行して震源域が帯状に分布しています。沿岸に近い震源はプレートの沈み込みに沿うような形での分布になっています。沿岸から遠い二列目は、ハの字のような分布を見せており、これも先々検討していくことにしたいと思います。
図3-3 東北地方太平洋側震源地域別地震回数グラフ
図3-3 は、日別の地震回数を折れ線グラフにしたものです。会津地方に M5.2 の地震が起きてその随伴震がほぼ垂直に分布していることから、833回 という非常に多い地震回数となりました。
その他の地域は、グラフの会津地方を非表示にすると、福島県沖が 40回前後から70回 という回数を見せ、宮城県沖、岩手県沖、三陸沖が次いで多く見られます。岩手県沖で 64回、下北半島で 55回 という多数回の地震が起きていますが、いずれも小さな地震が多発しているものになっており、下北半島では地震の巣になっているように見られます。
図3-4 東北地方太平洋側エネルギー分布ボックスプロット
図3-5 東北地方太平洋側エネルギー分布散布図
図3-4 と 図3-5 は地震エネルギーのボックスプロットと散布図です。1月の最大規模の地震が起きた福島県会津地方のエネルギー幅がとても広くなっているのが特徴的です。地域全体の地震を示していることもあり、ほとんど(75パーセンタイル)が 1.00E+6 という微小な地震となっているのも、この地域の特徴を示していると考えられます。
東北地方太平洋沖地震の後発震がまだ続いている地域でもあり、地震回数は他の地域に比べれば全体的に多いものの、その規模はいずれも小さくなっています。
青森県東方沖は、東北地方太平洋沖地震の震源域と呼ばれるエリアには入っていませんが、今月は 1E+12(M4.8) という中規模の地震が最大規模であったものの、十勝沖地震と名付けられた大きな地震が起きている震源地域であることを知っておかなければなりません。
図3-6 東北地方太平洋側震源深さ分布ボックスプロット
図3-7 東北地方太平洋側震源深さ分布散布図
図3-6、図3-7 は、震源の深さについてのボックスプロットと散布図です。海域ではプレートの潜り込みに沿うように、浅発地震から中深発地震が見られます。陸域では浅発地震と中深発地震が分かれ震源となって分布しています。
東北地方日本海側
図4-1 2025-01 東北地方日本海側の震央マップ
図4-1 は東北地方日本海側の震央マップです。東北地方太平洋側に比べると著しくその回数は少ないことは明らかですが、秋田沖から奥尻島南側まで線上の震央ラインが見られます。また、庄内沖など山形県庄内地方にも小さな地震が起きています。
いずれの地域も過去に大きな地震があった地域であることを忘れてはいけないと思います。
図4-2 東北地方日本海側の震源 3D 散布図
図4-2 は震源分布の 3D グラフです。浅発地震と中深発地震に震源がふたつに分かれていることがわかります。
図4-3 東北地方日本海側震源地域別地震回数グラフ
図4-3 は日別の地震回数を折れ線グラフにしたものです。多くて 1日 3回程度の地震が散発するという状況となっています。秋田県沖と青森県西方沖が 1日3回 の地震を記録しています。
図4-4 東北地方日本海側エネルギー分布ボックスプロット
図4-5 東北地方日本海側エネルギー分布散布図
図4-4、図4-5 は、地震エネルギーのボックスプロットと散布図です。地域的には地震回数が少なくかつ規模も小さいものとなっています。そうは言っても過去に大きな地震が起きていることもあり、日本海沿岸では歪みが静かに蓄積されているかも知れないとも考えられます。
図4-6 東北地方日本海側震源深さ分布ボックスプロット
図4-7 東北地方日本海側震源深さ分布散布図
図4-6、図4-7 は、震源の深さについてのボックスプロットと散布図です。それぞれの地域での回数が少ないものの、散布図を見ると浅発地震と中深発地震の震源に分かれていることがわかります。
関東地方(山梨県を含む)
図5-1 2025-01 関東地方の震央マップ
図5-1 は、関東(山梨県を含む)地方の震央分布マップです。小さな地震が多いとは言え、意外な多さでと考えられます。また、地震の巣とみられる場所が千葉、茨城、栃木に見られます。海域では、東北地方太平洋沖地震の後発震が依然として続いています。
図5-2 関東地方の震源 3D 散布図
図5-2 は震源分布の 3D グラフです。太平洋プレートとフィリピン海プレートが重なっているエリアということで、震源分布もそれに応じて複雑に入り組んでいるように見られます。
緯度 34°N、経度 144°E を手前にして、最奥部の先発地震の巣が栃木県北部(足尾近傍)を震源とする地震となっています。
図5-3 関東地方震源地域別地震回数グラフ
図5-3 は、日別の地震回数を折れ線グラフにしたものです。栃木県北部、足尾近傍は地震の巣となっていて、1日60回という回数の日も見られます。1年を通して活発な地震活動が繰り返されているエリアです。
ところが、1月23日の東北地方太平洋側、福島県会津地方・下会津の地震前からその地震活動が低調になり、若干の増加はみられたものの地震後もその傾向が続いています。
図5-4 関東地方エネルギー分布ボックスプロット
図5-5 関東地方エネルギー分布散布図
図5-4、図5-5 は、地震エネルギーのボックスプロットと散布図です。関東東方沖の中規模地震(3.98E+12・M5.2)を除くと概ね小規模の地震が見られる状況となっています。
その中で、茨城県沖が 455回、茨城県北部が 377回と他の震源地域と比べると地震回数が非常に多くなっています。この二地域に次いで栃木県北部が 285回とやはり他の地域と比べると多くなっています。
陸域が震源となっている地震が起き続けている茨城県北部では、高萩市と北茨城市にまたがって、栃木県北部では足尾周辺と群馬県南部にまたがるように地震の巣が見られます。また、海域が震源となっている茨城県沖は、福島県沖から千葉県銚子沖までの帯状に震源が広がっています。
図5-6 関東地方震源深さ分布ボックスプロット
図5-7 関東地方震源深さ分布散布図
図5-6、図5-7 は、震源の深さについてのボックスプロットと散布図です。ふたつのプレートと切れ端が重なっているエリアということで、地震の起きる深さも様々で複雑な様相を示しているようです。
北陸・信越地方
図6-1 2025-01 北陸・信越地方の震央マップ
図6-1 は、北陸・信越地方の震央マップです。能登半島周辺の地震活動は減少したとはいえ、未だに活発という様相を示しています。フォッサマグナ西縁北部、中央構造線、仏像構造線周辺での地震活動も見られます。
また、御嶽山の東山麗での震央群のエリアでは、御嶽山東山麗群発地震(1979年〜)や長野県西部地震(1984)を引き起こしています。
図6-2 北陸・信越地方の震源 3D 散布図
図6-2 は、震源分布の 3D グラフです。大きくは能登半島周辺と、長野県全域に震源が集中していることがわかります。
震源の深さはほとんどが浅発地震となっていますが、石川県西方沖から日本海中部にかけての震源は深発地震となっています。他の地域とは震源の深さが異なっている点、プレートの沈み込みとは反対のカーブを震源が描かれている点などが、地震の原因が何かを考えさせられます。
図6-3 北陸・信越地方震源地域別地震回数グラフ
図6-3 は、日別の地震回数を折れ線グラフにしたものです。陸域の地震はいずれも 20回/日以下のものばかりとなっています。ただし、長野県南部は御嶽山東麗地震域のために、4〜20回/日 の地震が起きています。
能登半島周辺の地震は、能登地方、石川県西方沖、能登半島沖ともに、徐々に回数を減らしているように見受けられるものの、1日あたり数回から最大30回以上の間、増減を繰り返しています。
図6-4 北陸・信越地方エネルギー分布ボックスプロット
図6-5 北陸・信越地方エネルギー分布散布図
図6-4、図6-5 は、地震エネルギーのボックスプロットと散布図です。地震の合計回数を震源地域別に見ると、能登地方(539回)が最も多く、次いで石川県西方沖(458回)、そして、長野県南部(364回)となっています。
まだ当分の間は、能登半島地震の後発震が続くものと思われます。大きな地震が地震の巣となっている地域周辺と近傍地域に起きないことを願うばかりです。
図6-6 北陸・信越地方震源深さ分布ボックスプロット
図6-7 北陸・信越地方震源深さ分布散布図
図6-6、図6-7 は、震源の深さについてのボックスプロットと散布図です。散布図を見るとわかりますが、ほとんどが浅発地震となっています。3D マップの項でも記しましたが、その一方で数は少ないものの石川県西方沖と日本海中部に深発地震が起きているのが目に付きます。
東海地方
図7-1 2025-01 東海地方の震央マップ
図7-1 は、 東海地方の震央マップです。陸部では小さな地震が全域で起きていることがわかります。体感せずともどこかで地震が起きている。この小さな地震が大きな地震につながることは少ないだろうと考えられるものの、過去を考えればそうとも言い切れないとも言えます。
海域は東海地震、東南海地震エリアとなります。大きな地震は見られないものの、陸域よりはかなり大きな地震がくり返し起きていることがわかります。巨大地震とは数桁違う地震規模ですが、それでも歪みエネルギーが発散されているという事実。また、時には M7 クラスの地震が起きていることにも注目しなければならないと思います。
図7-2 東海地方の震源 3D 散布図
図7-2 は、震源分布の 3D グラフです。ほとんどを陸域の浅発地震で微小なものが占めているのが良くわかります。そして、海域での地震は深発地震で小さい地震ながらも、陸域よりは大きな地震が起きています。
図7-3 東海地方震源地域別地震回数グラフ
図7-3 は、日別の地震回数を折れ線グラフにしたものです。最も多い地域は岐阜県飛騨地方、御嶽山からは離れていますが、北北東の地域に地震の巣があり通年で地震が少なからず見られます。静岡県内の陸部でも 10回/日 程度の地震が起きる日があります。
図7-4 東海地方エネルギー分布ボックスプロット
図7-5 東海地方エネルギー分布散布図
図7-4、図7-5 は、地震エネルギーのボックスプロットと散布図です。地震回数の多い震源地域を持つエリアに比べると、その頻度は少なく規模も小さいと言えます。それでも、地震の巣となっている岐阜県飛騨地方は 161回 の地震が起きています。それに次ぐのが静岡県西部の 124回で、震央マップを見てみると仏像構造線周辺に集中しているようにも見受けられます。
図7-6 東海地方震源深さ分布ボックスプロット
図7-7 東海地方震源深さ分布散布図
図7-6、図7-7 は、震源の深さについてのボックスプロットと散布図です。浅発地震は、ほとんどが微小・極小と言ってよいほどの規模の地震となっています。中深部・深部地震は、小規模の地震がほとんどで、飛騨地方を除くとあとは海域で起きています。
近畿地方
図8-1 2025-01 近畿地方の震央マップ
図8-1 は、近畿地方の震央マップです。和歌山県北部は地震の巣、通年小規模な地震が多発している群発地震エリアです。気象庁によりますと、この地域は中央構造線がある場所ですが、群発地震と中央構造線の地震メカニズムが異なるとのことです。ただし、その理由は不明。
和歌山県北部ばかりか、和歌山県南部でも小規模な地震が起きています。さらに、その西方の紀伊水道に向かって帯状に連なっているようにも見えます。仏像構造線が関係しているかいないかは、想像の域を超えないと思われます。
兵庫県南東部から大阪府北部、京都府南部、さらに滋賀県へとつらなる地震の帯は、新潟-神戸歪集中帯と呼ばれる長大な帯状地域の南部エリアに当たります。
図8-2 近畿地方の震源 3D 散布図
図8-2 は、震源分布の 3D グラフです。ほとんどが微小の範囲と言える浅発地震が頻回に起きていることがわかります。小規模の地震は 10回未満とわずかな回数で、深発地震と浅発地震が半分ずつとなっています。
図8-3 近畿地方震源地域別地震回数グラフ
図8-3 は、日別の地震回数を折れ線グラフにしたものです。ほとんどの地区が 10回/日 未満となっていますが、群発地震が見られる和歌山県北部は、6〜33回/日 の間で地震が起きています。それに次ぐ紀伊水道では、和歌山県北部ほどではありませんが、1〜19回/日 の間で地震が起きています。
図8-4 近畿地方エネルギー分布ボックスプロット
図8-5 近畿地方エネルギー分布散布図
図8-4、図8-5 は、地震エネルギーのボックスプロットと散布図です。ほとんどが 2E+7(J)以下という微小と言える範囲での地震になっています。それでも1E+9 以上の地震が起きていますので、震源の位置によっては計測点で震度が測定されることがあります。
和歌山県北部の地震回数は 433回 と信じられないほどの回数となっています。いずれも微小な地震であるために、南海トラフ地震ほどには話題に上ったり、注意を向けられたりすることは無いようです。
図8-6 近畿地方震源深さ分布ボックスプロット
図8-7 近畿地方震源深さ分布散布図
図8-6、図8-7 は、震源の深さについてのボックスプロットと散布図です。南海トラフでフィリピン海プレートが潜り込んでいるとは思えないほどの、浅部地震のみと言って良いほどの深さでの震源分布となっています。
それでも南海トラフに近い和歌山県では、浅部とは言えその中でも深いところでの地震が分布しており、潜り込み角度が浅いフィリピン海プレートの影響を受けているのでしょうか。
四国地方・中国地方瀬戸内海側
図9-1 2025-01 四国・中国地方瀬戸内側の震央マップ
図9-1 は、四国・中国地方瀬戸内側の震央マップです。近畿地方のあとのマップは、その差が歴然としたもの。日本列島の成り立ちがどのようなものだったかを、ある意味よく示しているとも言えます。
次の項、中国地方日本海側と一緒に見ると、さらにその姿が良くわかるかと思われます。
日本列島がかつてはユーラシア大陸の辺縁に位置していたこと、そして、直線上に並んであったとされています。それが、フィリピン海プレートの誕生、日本海の開大、フォッサマグナ、等々によって今の形になったのは 1500万年前あたりとされます(このあたりの事はまだ諸説あり確定していません)。
四国・中国地方は、かつては九州と一列に並んでいたと考えられています。その痕跡が教科書にも出て来る中央構造線、そして、九州では活発な活動している火山列が中国地方にも延びていることです。
中国地方で見られる地震列、中国地方日本海側と共に、九州の火山列の延長線上にあるように見られます。火山活動は低調でも地震が起きるようなエネルギー供給(応力とそれによる歪み生成)があるのではないかと推測されます。
四国の瀬戸内海側の地震列は、明らかに中央構造線に沿ったものと見ることができます。
一方、南海トラフ震源域とされる四国から四国沖にかけての地震活動は、紀伊水道付近では活発なものの室戸岬と足摺岬との間の高知沖、四国海盆での活動は皆無に近い状況です。地震本部等が示している震源域は、あくまでも主震が起きたあとの連鎖震を含めたエリアであると考えられます。
実際の地震分布、過去の主震震源を見ても、その位置は室戸岬以東となっています。従って南海トラフ地震の主震発生域は、室戸岬以東と想定されるのでは無いかと個人的には考えています。
図9-2 四国・中国地方瀬戸内側の震源 3D 散布図
図9-2 は、震源分布の 3D グラフです。フィリピン海プレートが緩やかに潜り込んでいることから、浅発地震となる深さでの震源がほとんどとなっています。
図9-3 四国・中国地方瀬戸内側震源地域別地震回数グラフ
図9-3 は、日別の地震回数を折れ線グラフにしたものです。最大で 6回/日 と東北地方日本海側よりは多いものの、国内では地震回数の少ないエリアと言えましょう。
岡山県では全く地震が記録されていません。2025年1月については、日本で唯一地震が記録されていない県となっています。
図9-4 四国・中国地方瀬戸内側エネルギー分布ボックスプロット
図9-5 四国・中国地方瀬戸内側エネルギー分布散布図
図9-4、図9-5 は、地震エネルギーのボックスプロットと散布図です。過去に大きな地震があった安芸灘、伊予灘も平穏といったところでしょうか。地震の回数・規模ともに少なく微小な状況になっていると言えましょう。
図9-6 四国・中国地方瀬戸内側震源深さ分布ボックスプロット
図9-7 四国・中国地方瀬戸内側震源深さ分布散布図
図9-6、図9-7 は、震源の深さについてのボックスプロットと散布図です。伊予灘の中深発地震 1 を除いて、すべて浅発地震帯で起きています。回数は少ないとはいえ、フィリピン海プレートの沈み込みと関係するのか、それぞれの震源地域ごとに震源の集中する深さが異なっていることがわかります。
中国地方日本海側
図10-1 2025-01 中国地方日本海側の震央マップ
図10-1 は、中国地方日本海側の震央マップです。1日単位の震央マップではわからない分布を見て取れます。日本列島では最も古いとされる陸地のひとつが島根半島です。
そして、九州へと続く火山帯が白山から続いて中国地方日本海側に連なっています。火山の活動は活発でなくても、微小ともいえる地震活動がそれに沿うように見られ、東は兵庫県北部から京都府北部へ、西は山口県中西部から周防灘を渡り豊前エリアへと。
図10-2 中国地方日本海側の震源 3D 散布図
図10-2 は、震源分布の 3D グラフです。火山周辺には大きな地震が起きないという、教科書的とまではいきませんが、ほとんどが 1E+6 以下、つまり M1 と計測されない極小地震ばかりとなっています。
図10-3 中国地方日本海側震源地域別地震回数グラフ
図10-3 は、日別の地震回数を折れ線グラフにしたものです。現時点では多くても 5回/日 という低頻度となっていて平穏といえる状態ですが、過去には M7 クラスの大地震(最大震度 6強)が鳥取県内で起きています。
図10-4 中国地方日本海側エネルギー分布ボックスプロット
図10-5 中国地方日本海側エネルギー分布散布図
図10-4、図10-5 は、地震エネルギーのボックスプロットと散布図です。最大の地震は、歩くと走るの間ぐらいのエネルギー、揺れの程度となります(ちぃちゃん: ChatGPTの解説)。最小の地震は、コップを置くとき位の揺れといえるかどうかの程度(同)です。
図10-6 中国地方日本海側震源深さ分布ボックスプロット
図10-7 中国地方日本海側震源深さ分布散布図
図10-6、図10-7 は、震源の深さについてのボックスプロットと散布図です。陸域、海域を問わずすべてが浅発地震域での震源となっています。日本列島の中で山口県西部地域は、最も古い部類の地層で出来ていると言われています。
九州東部
図11-1 2025-01 九州東部の震央マップ
図11-1 は、九州東部の震央マップです。海域の日向灘、豊後水道にかけては地震活動が活発なことがわかります。昨年来のものでその後発震と考えられます。陸域では霧島、桜島などの火山周辺での地震活動が目立っています。
図11-2 九州東部の震源 3D 散布図
図11-2 は、震源分布の 3D グラフです。海域では 1月13日に起きた日向灘での地震の随伴震が、震源域の東南東浅部に集中しています。くわしくは日向灘の地震参照。そして、フィリピン海プレートの潜り込みにあわせて震源域も分布していると見られます。
M6.6(5.01E+14) という大地震一歩手前と考えられる地震で、昨夏の地震は今回の地震の 約5.62倍 の地震でした。国は昨夏での騒ぎで世間をミスリードしたためか、この地震でも判定委員会を招集しました。
震源域という概念を、主震となる地震が発生する震源地域と考えれば確かに、昨夏の地震、今回の地震も震源域の範囲内となります。しかし、これまでの事実を見ていくと、主震となる地震が発生する震源地域は前にも記したとおり、歴史的に南海地震は、室戸岬から潮岬の間で起きています。
従って、国ならびに関係機関が震源域としている地域は、連鎖震、随伴震、派生震が起きる地域ということになると考えることが出来ると思います。よって、主震が起きる地域としては、大きな地震が起きたあとの経過や過去の地震の記録からも日向灘ならびに豊後水道の可能性は低いと考えられます。
図11-3 九州東部震源地域別地震回数グラフ
図11-3 は、日別の地震回数を折れ線グラフにしたものです。1月13日の日向灘での大地震手前の規模となった主地震の影響により、1月13日から15日にかけては多数の連鎖震、随伴震、等が起きながら、下旬後半には主震発生前の状況にまで戻っています。
35回/日 という地震回数を示した鹿児島湾が、日向灘での地震回数に次いでいます。ただし、この震源地域の地震は、1月27日のみというエポック的なもので姶良カルデラの影響があるのかと考えられます。
図11-4 九州東部エネルギー分布ボックスプロット
図11-5 九州東部エネルギー分布散布図
図11-4、図11-5 は、地震エネルギーのボックスプロットと散布図です。地震の回数は、大きな地震が起きた日向灘が突出しており、他の地域は多くても100回前後、少ないところは 1回というところもあります。
日向灘の主震後に起きた中規模の地震は、1月14・15日に 1回ずつという随伴震、派生震と考えられます。この地域以外での地震は、1E+10 以下となっておりいずれも小地震、微小地震がほとんどです。
図11-6 九州東部震源深さ分布ボックスプロット
図11-7 九州東部震源深さ分布散布図
図11-6、図11-7 は、震源の深さについてのボックスプロットと散布図です。日向灘は浅発地震が 0〜50kmで起きている一方、他の震源地域では九州南東沖、大分県北部を除いて浅発地震、浅発地震と中深発地震エリアで震源の集まりが二分されていることがわかります。
九州西部
図12-1 2025-01 九州西部の震央マップ
図12-1 は、九州西部の震央マップです。熊本県阿蘇地方から不知火海(八代海)まで帯状に震央域が連なっています。島原半島(雲仙岳)を挟むようにして、北東と南西にも震央域が集中しています。
図12-2 九州西部の震源 3D 散布図
図12-2 は、震源分布の 3D グラフです。熊本県熊本地方と東シナ海を除くと、すべての地震が浅発地震となっています。また、東シナ海を除くと熊本地方で起きた 1.259E+8(M2.2)の地震が最大で、いずれも小規模、微小な地震となっており、回数は見られるものの活動は穏やかとなっていると考えられます。
図12-3 九州西部震源地域別地震回数グラフ
図12-3 は、日別の地震回数を折れ線グラフにしたものです。1日あたりの回数では、熊本県阿蘇地方の 21回 が最大となっており、これも前日の 9回 を含めて一時的なものと見られます。熊本地震があった熊本地方は、回数は少なくなっているものの、小規模、微小地震が 2〜15回/日 の範囲でくり返し起きています。
図12-4 九州西部エネルギー分布ボックスプロット
図12-5 九州西部エネルギー分布散布図
図12-4、図12-5 は、地震エネルギーのボックスプロットと散布図です。東シナ海を除けば、先に記したとおり 1.26E+8(M2.2)以下の小規模、微小地震で占められています。
熊本県熊本地方はもちろん、福岡県北西沖でも大きな地震が起きていることから、今は平穏な状態と考えられても、再び大地震が起きることは想定しておかなければならないと思われます。
図12-6 九州西部震源深さ分布ボックスプロット
図12-7 九州西部震源深さ分布散布図
図12-6、図12-7 は、震源の深さについてのボックスプロットと散布図です。東シナ海と熊本地方、球磨地方のいくつかの地震を例外として、ほぼすべての地震が浅発地震、19km未満の深さで起きています。
大きな地震が起きれば、その地震の発生深さの特徴そのままに、地震の規模以上に大きな被害が出るということになります。
南西諸島
図13-1 2025-01 南西諸島の震央マップ
図13-1 は、南西諸島の震央マップです。薩摩半島、大隅半島沖から台湾まで、琉球海溝と沖縄トラフに沿うように震央域が帯状に連なっています。
1月21日に台湾南西部で 8.91e+13 J(M6.1)の地震が主震となり随伴震、後続震が続く中で、1月26日に 1.12e+13 J(M5.5)の中規模地震が起きています。国内ではないので小規模、微小な地震は観測されていませんが、それでも5.62e+09 J(M3.3)という地震の記録を得ています。
昨年にはほとんど見られなかったエリアでの地震、今後どのように推移するかが気がかりです。
図13-2 南西諸島の震源 3D 散布図
図13-2 は、震源分布の 3D グラフです。フィリピン海プレートが沈み込んでいる琉球海溝に沿うような形での震源分布になっていると考えられます。
浅発地震から中深発地震まで、昨年に比べると全域で活動が活発化しているように見られます。
図13-3 南西諸島震源地域別地震回数グラフ
図13-3 は、日別の地震回数を折れ線グラフにしたものです。2025年1月は、石垣島周辺に地震活動が集中していると見られます。昨年は台湾東部・東海岸沖にはじまり、与那国島付近で地震の巣が見られましたが、それがわずかながら東へ移動したように見受けられます。
沖縄本島近海も石垣島周辺ほどではありませんが、昨年に比べると活動が活発化しています。南西諸島全体を見渡すと、一部地域は昨年も多いところが散見されていましたが、全域で地震回数が増えているように思われます。
図13-4 南西諸島エネルギー分布ボックスプロット
図13-5 南西諸島エネルギー分布散布図
図13-4、図13-5 は、地震エネルギーのボックスプロットと散布図です。台湾を除くと、石垣島周辺と宮古島で中規模(1E+12: M4.8 以上)の地震が複数回起きています。それ以外は小規模、微小な地震がほとんどと言えましょう。
図13-6 南西諸島震源深さ分布ボックスプロット
図13-7 南西諸島震源深さ分布散布図
図13-6、図13-7 は、震源の深さについてのボックスプロットと散布図です。琉球海溝と沖縄トラフに囲まれた島々の周辺で起きる海溝型地震エリアということもあり、浅発地震から中深発地震まで広く分布しているのがわかります。
伊豆・小笠原諸島
図14-1 2025-01 伊豆・小笠原諸島の震央マップ
図14-1 は、伊豆・小笠原諸島の震央マップです。南西諸島ほどではありませんが、震度観測点や各種地震観測点が青ヶ島までの伊豆七島には設置され、さらに南下して小笠原諸島の父島、母島にも設置されています。
震央は伊豆・小笠原諸島に沿うように転々と、伊豆七島を離れると小規模な地震を見ることが少なくなり、地震の震央もまばらになっています。それでも八丈島東方沖には地震の巣のような震央の塊をみることができます。
図14-2 伊豆・小笠原諸島の震源 3D 散布図
図14-2 は、震源分布の 3D グラフです。さすがに世界有数の深さを誇る日本海溝沿いに並ぶ島嶼での震源ということもあり、深発地震が少なからず見られます。
また、日本列島から遙か南に位置する震源でも、その規模によっては本州で最大 震度5強 という地震が起きたこともあります(2015年5月30日)。この時の地震では本州はもとより、北海道から南西諸島まで全国で震度が観測されています。
図14-3 伊豆・小笠原諸島震源地域別地震回数グラフ
図14-3 は、日別の地震回数を折れ線グラフにしたものです。先に八丈島東方沖に地震の巣が見られるという記したとおり、0回/日 が 1日あるものの、最大 20回/日 の間でくり返し地震が起きています。その他の震源地域では、伊豆半島東方沖を除いてほとんどが 3回/日 以下で推移しています。
図13-4 伊豆・小笠原諸島エネルギー分布ボックスプロット
図14-5 伊豆・小笠原諸島エネルギー分布散布図
図14-4、図14-5 は、地震エネルギーのボックスプロットと散布図です。地震が起きる回数は少ないものの、1E+12(M4.8)以上の中規模地震が鳥島近海、父島近海で各1回、硫黄島近海で 3回起きています。
八丈島東方沖では、他の地域と比べると少ないとはいえ、小規模、微小な地震が 159 回起きています。
図14-6 伊豆・小笠原諸島震源深さ分布ボックスプロット
図14-7 伊豆・小笠原諸島震源深さ分布散布図
図14-6、図14-7 は、震源の深さについてのボックスプロットと散布図です。全体的な傾向は、海域といってもやはり浅発地震が多く見られます。くり返しになりますが。回数は少ないものの日本海溝に沿った震源地域ということもあり、最深が 543km、その他にも 400km台の地震が 7回 起きています。
コメント