2025-01-23 02:49 に福島県会津地方に M5.2、Mw4.7 の地震が起きました。地震の規模は中規模の地震でしたが、最大震度 5弱 というかなり大きな揺れを観測しました。
そのためか一部の情報アカウントでは、観測史上初の震度 5弱 という記載がされるなど、ちょっとした騒ぎになった地震です。
これまでのノートにもありますように、現在の震度というのはあくまでも観測点で震度計が計測した数値を示したものなので、今も昔も変わらず観測点の位置がどこにあるかによって、地震が起きたとしても震度の大小だけでなく、測定の可否にもかかわります。
現在では 1996年以降は密度の高い観測網となっているので、微小な地震でも観測網の範囲であれば、震源情報は得られます。さらに震度情報も同様に1995年以前とは比較が出来ないほどに、取得出来る状態になっています。
震源情報、震度情報のいずれも相対値であることを忘れてはならないことが、地震を見る・知るに当たっては重要なことであります。
図1 2025-01-23 02:49 福島県会津に起きた地震震央
図1 は 2025-01-23 02:49 福島県会津に起きた地震震央を示したマップです。良く見るとマーカーが 2つあることが確認出来ます。右側が 02:49 27.9、 M: -、深さ: 5km、左側が 02:49 28.2、M: 5.2、深さ: 4km の地震です。
同時同分、0.3秒ちがいに 2つの地震が起きており、先の地震のマグニチュードは不明となっています。震度の測定に前者の地震がどのように影響していたかは、大いに興味が湧くものの情報取得ができませんでしたので、「ほぼ同時に 2つの地震が近傍で起きていた」に止めることにします。
図2 1919-2025 に起きた 福島県会津 での M5 以上の地震
図2 は、1919-2025(1月末時点)の 福島県会津 で起きた M5 以上の地震をマッピングしたものです。今回の地震を入れて 14回発生しており、1943-08-12 13:50 39.36、M: 6.2、深さ: 26.0km の地震を最大として、その他の地震はすべて M5 クラスと中規模の地震となっています。
図3 1919-2025 全国震源地域別地震回数マップ
図3 は、1919-2024 の間に起きた地震を、8階層に分類してマッピングしました。右上の凡例のチェックで、当該階層の 表示/非表示 ができます。
図2 のように、福島県会津 では M5 以上の地震は 106年間で 14回となっています。大地震クラス以上の地震がありませんので、当然、地震の回数は少ないと思われます。
実際は、今回の地震が起きる前に 1919-2024 の地震についてノートを作る予定で、資料作成を行っていたところ、地震回数のマッピングを行った結果、2024年 1年間の観察で地震発生について目立った地域ではないにもかかわらず、地震回数やマグニチュード合計値が高い地域があることに気が付きました。
そのうちで地震回数が、思った以上に多かった地域のひとつが福島県会津でした。8階層に区分した中で 上から 3番目、5万〜10万回の階層に入っていて、70,183回 という地震が 106年間に起きていました。
図4 1919-2025 福島県会津の震央分布クラスターマップ
図4 は 1919-2025 の福島県会津の震央分布をクラスター化してマッピングしたものです。初期の表示でわかるように(元データの関係でエリア外の震央もあります)、会津では地震分布が大きく 3つのエリアに分かれると考えられます。
ここでは、上部を 上会津、中央を 中会津、下部を 下会津とします。地震回数の最も多いのは 上会津で、最大地震 M6.2 とその随伴震が起きたのが 中会津、そして、2025年1月23日 M5.2、震度 5弱 を観測した地震は 下会津 となります。
最大震度を観測したエリアが、3つのエリアの中では地震回数が最も少ない、それも 上会津 の 1/4、下合図の 1/2 という回数になっています。
図5 2025-01-23 02:49:28 の同日震央周辺での震央マッピング
図5 は、2025-01-23 の震央マップで、1日で 800回以上という地震がとても狭い範囲で起きました。下会津は、栃木、群馬、新潟県に近く、会津の地震は 3エリア独立しているとも見られるので、近隣地域との関係も見てみることにしました。
図6-1 会津周辺震源地域の 2025年震央マップ
図6-2 会津と周辺震源地域の 2025年震央マップ
図6-1 は、会津と周辺震源地域の震央マップ。図6-2 は、同じ範囲での 3D 散布図です。
震央マップではわかりにくいですが、3D 散布図にすると距離感が低くなますが、地震の巣がどこに見られるか、またその位置関係がマップよりわかりやすくなっています。
図示されている期間は短いものですが、下会津は上・中会津よりも、栃木・新潟県の地震と近い、関係性としては他の会津地域よりも強いとも考えられます。特に栃木県北部の地震の巣、足尾エリアとは比較的近い位置関係にあると言えましょう。
図7-1 20250101-0122 会津周辺地域の震央マップ
図7-2 20250123-0131 会津周辺地域の震央マップ
図7-1 と 7-2 は 20250123を境とした会津周辺地域の震央マップです。比べる期間の長さが違いますが、2024年の 1年間観察したところ関東地方では、栃木県北部の足尾周辺での地震が目立っていました。
ところが、1月23日を境にというより、それ以前から昨年と比べて地震の回数が減少傾向にあるように見受けられました。
当初、1月23日を重ねてマッピングを行っていたので、下会津の地震が 1月23日 の地震にマスキングされていました。これを 1月22日 までに変更したところ主震が起きる前に、1月21日あたりから先震が起きていたことが想定されます。
ここからは、福島県会津での過去の地震について、いくつか見ていくことにしたいと思います。M5以上の地震が 14回あり、その中から今回の地震と比較的近い 3つの地震と、最大マグニチュード M6.4 の地震を見ることにします。
図8-1 1943-08-12 13:50:39 中会津地震震度観測点マップ
図8-2 1943-08-12 13:50:39 中会津地震震度観測点 3D 散布図
図8-1、図8-2 は、1943-08-12 13:50:39 中会津地震の震度観測点に関する図となります。1996年以前は観測点数は著しく少なく、かつ人感での震度判定でした。加えて 1943年は第二次世界大戦中であったことも考えると、その観測態勢は必要最小限のものに縮小されていたと思われます。
M6.2 となれば中規模を超えた地震となりますが、最も震源に近い観測点が白河市、最大震度が 3 という結果は、現代の観測網から考えると有り得ないものとも言えます。実際に、1月23日の震源は、強震計、高感度地震計の設置点近傍でした。
気象庁が発表している震度観測データは、2021年までのものであるため、ここに掲載することはできませんが、気象庁サイトで 2日以前のものが震度データベースとして、直近のものが防災情報(メニューで地震情報を選択)で確認することができます。
参考までに 2013-02-25 16:23:53 栃木県北部の M6.3 の震度観測点情報を見てみたいと思います。
図9-1 2013-02-25 16:23:53 栃木県北部地震震度観測点マップ
図9-2 2013-02-25 16:23:53 栃木県北部地震震度観測点 3D 散布図
図9-2、9-2 は 2013-02-25 16:23:53 栃木県北部地震震度観測点 の分布をプロットしたマップと 3D 散布図です。1996年以降の観測点が充実してからの地震ということもあり、震度1 から 震度4 まで数多くの観測が行われています。
中会津の M6.2 の地震は、田島地震と名付けらている地震で、現在の観測網で測定されていたら、どのような震度計測になっていたか、震源近くではかなり大きな震度を観測していたと考えられます。
実際に文献研究記事を確かめたところ、地震の被害状況を福島測候所の職員が調査に当たり、人的被害をはじめとして地面の亀裂や陥没、壁の損傷などの報告がありました。この報告等に従って研究者が『歴史のための震度表』を元にして震度を推定したところ 震度5+ ということでした。
図10-1 1942-03-26 03:28:20 下会津地震震度観測点マップ
図10-2 1942-03-26 03:28:20 中会津地震震度観測点 3D 散布図
図10-1、10-2 は 1942-03-26 03:28:20、M: 5.3、深さ: 149.75km の地震観測点分布を表したものです。1月23日の地震に最も近い震源となる地震ですが、田島地震より 1年以上前の地震になりますので、同様に観測点は著しく少ない状態での観測となっています。
海域の地震は、プレートとの関係から 主震 ▶ 連鎖震 ▶ 随伴震 ▶ 派生震 ▶ 後発震 とある程度の範囲に広がるものですが、1月23日の地震はほぼ垂直方向に 800回以上の地震が主震後に起きて、その後も徐々に回数を減らしながら推移し、1月31日は 30回程度までになっています。
また、同じ福島県会津という震源地域、とても地震の多い地域とみられます。しかし、地震の発生域が独立する形ではっきりと 3区分され、最も地震が多く発生している上会津では大きな地震が見られないことは、この地震の特徴でありそれは地震の震源メカニズム解を見るとわかるように思われます。
図11 2025-01-23 02:49:28 震源メカニズム解の図

また、他県との県境近くでは隣接する震源域の地震との関連にも注意が必要であることも、海域に限らず陸域でも同様であると考えられます。
図12-1 2013-02-25 栃木県北部 M5.8 の同日震央マップ
図12-2 2013-02-25 福島県会津周辺震源地域の震源 3D 散布図
図12-1、12-2 は、2013-02-25 16:23:53 に栃木県北部で起きた M: 5.8、深さ: 2.48 km の地震と同日に起きた地震震央のマップと 3D 散布図です。下会津に隣接した奥鬼怒(鬼怒川最上流部)を震源とする主震とその関連地震は、県をまたいで北北西方向にひろがっています。
地震によってその震源域が様々になることを良く示していると思われます。
地震の起きる場所、時によって、その様相は著しく異なり、また、くり返し起きることは忘れてはならないことであります。予想確率、発生予想云々ではなく、いつ起きてもおかしくないと心がけることが大切だと思います。
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